研究課題
基底核系と小脳系の神経回路を巡ってきた情報はいずれも視床において、別々の核を経由して大脳皮質に中継される。昨年までの研究で、視床の大脳皮質投射ニューロンは両系統からの入力を一次、二次の樹状突起と細胞体で受けていること、抑制性の介在ニューロンのシナプス前樹状突起(PSD)が皮質投射ニューロンの細胞体をはじめ樹状突起とシナプスを作りつつ、外来性の入力終末とtriadと呼ばれるシナプス構築をなすことを明らかにした。このとき視床網様核(TRN)からの入力と思われる軸索終末が見つかったのでその本体を詳しく調べた。ネコの運動野皮質に4%WGA-HRPを少量注入して視床外側腹側核(VL)ニューロンを逆行性に標識すると同時に、TRNのうちVLへの投射域である吻側部に、WGA-HRPを少量注入して順行性にTRN終末を標識した。また超薄切片上で金コロイド法によるGABAを対象にした免疫組織化学染色も試みた。連続切片の三次元的復構を含めた電子顕微鏡によると、順行性に標識されたTRN終末は、長径が1-3μmで、小型から中型に分類できるものであった。これらの扁平シナプス小胞を含んでいて、対称型シナプスをVLの皮質投射ニューロンの細胞体、一次、二次、それ以下の樹状突起上に作っていた。上に記したtriadにはTRM終末は関わっていなかった。またTRN終末はGABA陽性であった。このことからVLにはPSDと、TRN終末の二種類のGABA陽性(抑制性)終末が存在することになるが、それらの局在性が異なることから、まったく別の機能を果たしていることが示唆された。またTRN終末がVLの皮質投射ニューロンの広範な部位にシナプスしていることから、大脳皮質からTRNを経由する抑制効果が瞬時にニューロン全体に行き渡るように考えられる。
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