1.ウマ・チトクロムcのさまざまな構造状態を調製し、これらとGroELの相互作用の機構を、蛍光、HPLCゲル濾過などによって調べた。用いた試料は、天然構造のチトクロムc、ポルフィリンチトクロムc、アポチトクロムc、チトクロムcから作製した3種類のフラグメントである。pH7、高塩濃度の条件では、アポチトクロムcだけが強い相互作用を示した。一方、低塩濃度の条件にすると、これに加えてポルフィリンチトクロムcと大きなサイズのフラグメントも相互作用を示すようになった。測定pHにおいて、GroELは負電荷、チトクロムcは正電荷を帯びている。そこで低塩濃度の条件では、静電的相互作用が強まり、従来相互作用の弱かったポルフィリンチトクロムcやフラグメントも結合するようになったことがわかる。 2.これと平行して各チトクロムc分子種の溶液中での構造を調べた。ポルフィリンチトクロムcはホロチトクロムcのモルテン・グロビュールに似た構造を、中性pHで既にとっていることを明らかにした。 3.GroELと基質タンパク質の相互作用のモデルとして、さまざまなチトクロムc分子種と、酸性リン脂質膜との相互作用を調べた。相互作用の特徴は、GroELとチトクロムc分子種との相互作用と極めてよく似ていることがわかった。 以上より、GroELと基質タンパク質の相互作用は、基質タンパク質の表面に露出した疎水的クラスターを介して行われることが明かとなった。また、GroELと基質タンパク質の相互作用は、リン脂質膜とタンパク質の相互作用と共通の特徴をもつことが明かとなった。
|