色素性乾皮症(xeroderma pigmentosum:XP)は、DNAの除去修復機構に異常をもつ常染色体劣性のヒト遺伝病で、患者は紫外線に高感受性を示し高頻度で皮膚癌を発症し、しばしば神経学的異常を併発することが知られており、日本人に多いA群(XPA)は、除去修復能も一番低く重い症状を示す。我々は、トリ・カエル・ショウジョウバエ(Dxpa)にもXPA遺伝子が存在し転写発現されていること、さらにこれらホモログのアミノ酸一次配列の比較から、N末側約3分の1の領域は核移行シグナルとして働く部位を除いては保存度が低いこと、残りのC末側約170アミノ酸からなるZnフィンガーモチーフを含む領域はよく保存されていることを明らかにし、C末側の保存された領域がDNA修復にとり重要な機能をになっていることを示してきた。さらにヒトA群XP細胞でこのDxpa遺伝子を強制発現させると紫外線に対し抵抗性を回復すること、ショウジョウバエの抽出液を用いたin vitroのDNA修復系を作成し、Dxpa遺伝子がショウジョウバエのホモの系でDNA修復に働き得る新しい遺伝子であることなどを明らかにした。Dxpa遺伝子の発現を発生の各段階で調べたところ、胚、幼虫、蛹、成虫と発生の段階に従ってその発現が上昇すること、成虫においては頭部よりも胸腹部での発現が高いことがわかった。また成虫各組織での蛋白の発現は、どの組織でも発現しているが特に視神経や筋肉での発現が高く、またステージ14の胚の時期には、神経索で強く発現していることが明らかとなった。これらの発現量の高さの生理的意味については、今後の検討が必要である。
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