本研究では生理的クラススイッチ誘導刺激であるCD40からの信号が、トランス・スプライシングによって産生されると考えられるtrans-mRNAの発現を誘導しうるかを検討した。TG.SA系統マウスの脾臓細胞をリコンビナント可溶化CD40ligandとIL-4によって刺激すると、細胞のblast化と増殖が観察されたが、その程度はLPSとIL-4によって刺激したものに比して低かった。これに対応して、可溶化CD40ligandとIL-4の刺激によるγ1およびε鎖の非組換え型定常部遺伝子転写物の産生誘導はLPSとIL-4による刺激に比べやや弱かった。しかしながら、この刺激によって、γ1鎖ならびにε鎖trans-mRNAの産生が強力に誘導された。このtrans-mRNAの産生誘導は、LPSのそれに匹敵するかむしろ強力であった。 今回の結果はtrans-mRNAの発現が人工的刺激のみならず、より生理的なクラススイッチ誘導刺激によっても誘導できることを示している。この事実を、我々がこれまでに示してきた結果と総合すれば、trans-mRNAの産生が生理的条件下でも起こりうる普遍的機構であることが極めて強く示唆される。可溶化CD40ligandによる刺激がLPSより強力にtrans-mRNAの産生を誘導したことは、CD40を介する刺激が生体内においてtrans-mRNAの産生を誘導するために本来的なものであることを想定させ、興味深い。今回の結果をこれまでのものと総合するとtrans-mRNAの産生は、生理的なものをはじめとする多様な刺激により、正と負の両方向に制御することが可能であると判明した。この点は、この過程がクラススイッチを検証的に制御するための中間過程であるとの仮説を支持している。
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