7個のWD repeat(N-末端よりWD1〜WD7)を持つTup1タンパクは、Ssn6タンパクとともに種々のDNA結合タンパクと会合し、多様な遺伝子の転写を抑制する酵母のDNA非結合性転写抑制因子である。本研究では、i)Tup1による転写抑制作用の標的、およびii)Tup1タンパクにより転写抑制を受ける新規な遺伝子を同定し、多様な制御糸の転写抑制に関与する真核生物DNA非結合性転写抑制因子の作用機構について基礎的知見を得ることを目的とした。Tup1と一般転写因子との相互作用を、GST Sepharose beadsに結合させたGST-Tup1とT7 tagを付けたTBP、TFIIB、TFIIEα、TFIIEβを発現させた大腸菌の粗抽出液とを用いた共沈降実験により解析した。その結果、GST-Tup1(7〜713 aa)とT7〜TBPとの結合が検出された。それぞれのどの領域が相互作用するかを解析した結果、Tup1のC-末端ととTBPのC-末端領域が結合することわかった。 一方、Tup1により転写抑制を受ける新しい遺伝子として、酵母細胞の減数分裂開始に必須のIME1遺伝子を同定した。IME1プロモータ上でTup1-Ssn6複合体が作用する領域を同定するため、3つの領域 A(-1215〜-915)、B(-914〜-621)、C(-620〜-354)を調製して、転写活性化配列を持つレポータ遺伝子の上流に連結し、Tup1およびtup1株に導入した。その結果A、B領域を用いた時、TUP1株においてのみ転写抑制が見られた。従ってA、B領域にTUP1-Ssn6複合体の作用領域があると示唆された。そこでone hybrid法によりB断片に作用する因子をスクリーニングしたところ、ホメオドメインを持つ新規なタンパクが同定された。
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