Hox遺伝子群はショウジョウバエAntp遺伝子群に構造が類似した遺伝子としてクローン化された哺乳類遺伝子群であり、哺乳類の発生過程を制御している転写因子をコードする遺伝子群である。本研究の目的はHox遺伝子産物の発生過程における転写調節機構を明らかにすることである。我々は転写因子の抗体を用いた標的遺伝子クローン化法によって単離したHoxA7、mg1-1などのHoxC8遺伝子の標的遺伝子の発現が、Hox遺伝子産物によってどのようにコントロールされているかを解析した。標的遺伝子の発現をHox遺伝子産物と協同的に制御している転写因子の同定をいくつかの方法でおこなったところ、酵母ツ-ハイブリッドシステムにおいてHoxC8遺伝子産物とHoxC9遺伝子産物が特異的に相互作用していると考えられる結果を得た。この相互作用は、HoxC8およびHoxC9ターゲットマウスに生じる形態異常の類似性から考えて、個体レベルでも作用しているものと考えられる。さらに、相互作用に関わる領域を詳しく解析した結果、HoxC8のセカンドエクソンと、HoxC9のファーストエクソンによってコードされる領域の間で相互作用が起こっていることが明らかになり、これまでに報告されているホメオドメイン間の相互作用とは異なる領域の間での相互作用であると考えられる。またHoxC8と相互作用する蛋白をツ-ハイブリッドシステムを用いてスクリーニングした結果、マウス胎児で発現している未知の遺伝子を得た。
|