研究概要 |
1)転写因子TFIIFは、RNAポリメラーゼIIによる転写開始とmRNA合成の伸長反応に関与する生物にとって必須な転写因子である。TFIIFはRAP30とRAP74とのヘテロテトラマ-である。TFIIFの構造生物学を目的に現在その高次構造の解析を進めているが、今回、昆虫細胞に発現させたリコンビナントIIFを用いてトリプシンによる限定分解を行なった。その結果、RAP74はRAP30より強いトリプシン感受性を示し、おそらくRAP30は内側に存在し、RAP74は外側に配位していることを疑わせた。さらに、RAP74の分解はセントラル領域と呼ばれるチャージに富むドメインがきわめて分解されやすく、N-,C-未領域はトリプシンに抵抗性を示した。このことから、RAP74はN-,C-末でグロブユラ-な構造をとっており、その間の領域は確かな構造をとらず、タンパクの外面を向いていることを示唆した。また、TBP,IIB,PolIIとプロモーターDNAとでDBPolF複合体を作らせたとき、RAP30はトリプシン消化から保護されたが、RAP74のセントラルドメインの分解には変化がなかった。これまでに、RAP74のこの領域は種々のリン酸化を受けやすい事、SRFなどの転写制御因子との作用部位であることがわかっている。この知見は高次構造の理解に参考になると思われる。2)細胞周期でPolII基本転写活性が変化することを見いだした。結果は、PolIIインヴィトロ転写活性が、S/G2期で低く初期G1期で高いことがわかった。この違いは、TFIID活性によってもたらされるが、TBPの発現量には変化がなく、また、S/G2期に転写のレプレッサーが存在するということもなかった。TFIIDはTBP/TAFから構成されるので、細胞周期でのTFIID活性の変動はTAFによって制御されているのかも知れない。一方、PolIII因子であるTFIIIB(sBPとPolIIITAFとで構成される)についても細胞周期M期で活性が低下することが報告され、TBPとTAFの複合体の制御の可能性が強く示唆される。
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