研究課題/領域番号 |
07258226
|
研究機関 | (財)東京都臨床医学総合研究所 |
研究代表者 |
藤田 尚志 財団法人東京都臨床医学総合研究所, 腫瘍細胞研究部門, 研究員 (10156870)
|
研究分担者 |
渡邉 伸昌 財団法人東京都臨床医学総合研究所, 腫瘍細胞研究部門, 研究員 (00270687)
米山 光俊 財団法人東京都臨床医学総合研究所, 腫瘍細胞研究部門, 研究員 (40260335)
|
キーワード | 転写因子 / 転写制御 / 遺伝子発現 / インターフェロン / ウイルス感染 |
研究概要 |
我々は、生体防御という重要な役割を担うインターフェロン(IFN)システムにおいて、転写活性化因子Interferon-stimulated-gene factor 3(ISGF3)が、IFNの生産(IFN遺伝子の活性化)とIFNの作用(IFN誘導遺伝子群の活性化)の両者に共通に中心的役割を果たしている事を初めて明らかにした。ISGF3は、DNA結合サブユニットであるISGF3γと制御サブユニットであるISGF3αとの複合体である。実際、ISGF3γのDNA結合領域を欠失させた変異体はドミナントネガティブに機能し、ISGF3αと優位に複合体を形成することにより内在性のISGF3を強く抑制し、その結果IFNの生産およびIFNによる抗ウイルス状態の成立が強く阻害されることを示した。本研究ではこの詳しい分子ネットワーク機構を解明することを目的としたものである。この系の特徴は、複数の遺伝子、そしてそれらの産物が複数の転写因子によって複雑に制御されていること、さらに複雑なフィードバック機構が重要な役割を果たしていると考えられる点である。 既にISGF3γのドミナントネガティブ変異体を用いてISGF3がIFN遺伝子の発現を正に制御していることが示された。ISGF3はもともとIFN分子が細胞表面レセプターに結合して開始される一連のシグナルトランスダクションの結果活性化されることが詳しく報告されている。ウイルス感染等によってIFN遺伝子が活性化される機構は直接的であるか、または一旦分泌されたIFNが自己に作用する、オートクリンの機構が働いているのかを解析した。IFNレセプターまたはIFN遺伝子が欠失している細胞株が複数知られており、これらについてウイルス感染によるISGF3の誘導を検討した。その結果、いずれの細胞株においてもISGF3は誘導されなかった。しかもIFN遺伝子の欠失した細胞は外から加えたIFNに反応してISGF3の誘導が認められることにより、IFNの生産にはオートクリンによるISGF3を介した増幅系が重要であると結論された。また、これらの細胞株においては、ISGF3とは異なる、新規の因子が検出された。この因子はIFN遺伝子の発現誘導の非常に初期に機能し、二次的なISGF3による増幅のきっかけをもたらすものであることが示唆された。
|