平成7年度は神経細胞の分化に伴う細胞表面ガングリオシドの発現の変化について研究を行なった。ガングリオシドに対する抗体は東京都臨床医学総合研究所、田井直先生よりご供与頂いた。初代培養したラット胎仔海馬ニュートンで種々のガングリオシドの細胞表面での発現を間接蛍光抗体法で調べたところ、GD3の強い発現が認められた。GD3は軸索に特異的に認められた。樹状突起に局在するMAP-2との二重標識を行なったところ、GD3とMAP-2とは局在がはっきりと異なっており、GD3が軸索に局在することが確認された。次に神経細胞の分化に伴うGD3の発現の変化について検討を行なうため、培養時間の異なるニューロンについてGD3の細胞表面の分布を測定した。軸索が決定していない培養の初期の段階ではGD3は細胞体に局在する。次いで成長円錐が形成されるとGD3は成長円錐に局在した。さらに軸索の成長に伴い、GD3は軸索全体に分布した。さらに培養を続けるとGD3は細胞から消失した。これらの結果は神経細胞における軸索の形成に、GD3が何らかの役割を果たしていることを示唆するものである。
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