Helicobacter pylori(HP)の生細胞への接着機構に酸性糖脂質であるスルファチドが深く関与することを明らかにし、この成果を、1995年度に米国での糖鎖に関する国際シンポジウムで発表するとともに、現在英文論文としてとりまとめ、近日中に米国微生物学会誌に印刷発表される予定である。また胃粘膜におけるスルファチドの局在については本年英文論文として発表したが、その病態における変化についても検討を行い、1996年に国際シンポジウムで発表予定である。また細菌側のスルファチド結合蛋白(アドヘシン)について解明するためにアフェニティークロマトグラフィーとSDS-ポリアクリルアミド電気泳動によっていくつかの細菌側の表層蛋白質を精製し、その部分アミノ酸配列を決定した。今後これらの蛋白の部分アミノ酸配列解析結果をもとにオリゴヌクレオチドを合成し、クローニングしてゆく予定である。また部分配列からすでに既知の蛋白であることがわかったものについてはPCR法で全長の増幅に成功し、ベクターへの組み込みを行って、これが接着に関与するのかどうかを明らかにする予定である。一方、他の研究者からHPの接着受容体として、Le^b糖鎖が関与していると報告されているため、疫学的にルイス式血液型とHP感染の関係を調査したが、両者に有意の関係はなく、他の研究者から報告されているルイス糖鎖が結合に関与していることを支持する所見は得られなかった。これについては現在論文をとりまとめている。
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