研究課題
Hanganutziu-Deicher (HD)抗原としてしられているN-グリコリルシアル酸を認識する抗体を得るためにウシ赤血球から精製したGM3 (NeuGc)、シアリルパラグロボシド(SPG (NeuGc))、i型ガングリオシド(NeuGc)を抗原として細菌リポ多糖体と共にリポソームで免疫し、モノクローナル抗体を作製した。得られた抗体はいずれもIgMクラスであった。そのなかでi型ガングリオシド(NeuGc)を抗原として得ると、免疫したi型ガングリオシド(NeuGc)とのみ反応し、調べた限りの類縁の糖脂質と反応することはない抗体(SHS-1)がとれた。SHS-1は力価も高く、N-グリコリル型と、N-アセチル型シアル酸を識別できるためヒト癌組織での発現を免疫染色法で詳しく調べた。病理学的に大腸癌と診断された標本を調べたところ44例中18例(44%)で陽性の結果が得られた。大腸癌の培養株化細胞では調べたもののうち2株で弱い陽性所見がみられた。胃癌では分化型で40例中17例、低分化型で16例中6例が陽性であったが、大腸と違い非癌部胃粘膜で38例中15例、正常胃粘膜で19例中11例に陽性の所見がえられた。その抗原性はタンパク質画分で、糖脂質画分にはこの抗体と反対する抗原は検出できなかった。この抗体はホルマリン固定のパラフィン包埋切片をもちいて免疫染色が可能であり病理学的な検索に適したものであることもわかった。
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