CDG症候群症例より得た培養皮膚線維芽細胞にdecorinの著名な発現低下を見出した。この培養細胞ではfibronectinやtype I collagenなど接着分子のmRNA発現およびそれらの培地中のあるいはマトリックスの蛋白量は増加していたのに対し、反接着(anti-adhesion)分子tenascinの発現レベルは減少していた。つまり、接着分子群が優勢であり、それによってこの細胞は偏平な形態的特徴を示すことになっていると考えられた。 次に、発現の減少しているdecorinを培地中20μg/mlの濃度に添加したところ、明らかな形態変化(正常化)を導くことができた。decorin添加による細胞形態の変化はこれらマトリックス関連分子の変化を介在して導かれたと考えられた。 新生児早老様症候群もCDG症候群と同様に培養皮膚線維芽細胞においてdecorinの発現低下が報告されている患者であるが、そのdecorin発現低下は小児期を過ぎる頃には正常化すると報告されている。われわれはこのような現象を確認するとともに、SPARC(osteonectin)は年令に関わりなく、そのmRNAおよび培地中の蛋白濃度が増加していることを見いだした。SPARCは骨形成に関わる分子であり、その発現異常が本症の特徴である骨形成異常と関連している可能性が示唆された(投稿中)。 一方、この疾患(neonatal progeroid syndrome)におけるdecorin発現異常は年齢依存的ではあるが、小児期(あるいはおそらく胎生期も)におけるその発現異常が本症のもうひとつの特徴である菲薄な皮膚や少ない脂肪沈着の一因となっている可能性も考えられた。
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