初期発生過程において、各割球がどの組織を作る細胞になるのかを決定するしくみを解明するのが本研究の目的である。材料としては、研究上の利点に富んでいる原索動物(ホヤ)を用いた。 本年度は、卵細胞質内組織決定因子によって決定がなされている内胚葉に関して、分子レベルでその決定機構を解明するべく解析を行った。 (1)内胚葉特異的アルカリフォスファターゼの発現 マボヤの孵化幼生を用いアルカリフォスファターゼの組織化学染色を行うと、内胚葉細胞にのみ強い活性が検出される。一方、発生過程を通してアルカリフォスファターゼの活性を検出すると、その活性は尾芽胚(受精後19時間)から現れ始めることがわっかた。転写阻害剤(アクチノマイシンD)と、翻訳阻害剤(ピューロマイシン)に対する感受性期より、アルカリフォスファターゼ遺伝子の転写は原腸胚期にはじまり、翻訳は尾芽胚期から起こり、翻訳が行われると同時に酵素活性が現れることが示唆された。 (2)内胚葉特異的アルカリフォスファターゼの精製及びcDNAクローニング まず幼生の膜タンパク画分から、種々のカラムワーク及び電気泳動を用いて内胚葉特異的アルカリフォスファターゼ蛋白質の精製を行った。極微量のタンパクが精製されたが、それを用いてN末のアミノ酸配列を20アミノ酸決定した。 この情報をもとにPCRとcDNAライブラリーのスクリーニングを行い、ほぼ全長を含むcDNAクローンを得た。現在、このcDNAを用い発現解析を進めている。
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