本研究は大規模なcDNA塩基配列解析システムを用いて、マウス胚発生過程の各ステージ、種々の部位において発現する遺伝子をその発現量の情報とともに記載し、さらに新規の遺伝子を探索することを目的としている。方法は(1)mRNAの3′末端のみを持つcDNAライブラリの作成、(2)PCRをベースにした大量シーケンス、(3)ワークステーションに構築されたプライベートデータベースとホモロジー検索プログラムによる遺伝子配列データの解析というシステムにより、各ライブラリより無作為に約1000クローンをシーケンスし、ライブラリ毎に遺伝子の発現頻度を千分率にして表し、ある遺伝子の発現場所と時期、強さを記載したデータベースを構築した。我々はこれを遺伝子の発現地図と呼び本年度は昨年度に続いて、解析ステージ、組織をさらに横に広げ、特に中枢神経でのgeneexpression profileを中心に解析を進めた。これまでに解析したライブラリは昨年度より9ライブラリ(解析クローン数にして約1万)増加し、8細胞期胚、8.5日胚、8.5日胚心臓、7.5日胚神経外胚葉、13.5日胚神経幹細胞を豊富に含む大脳皮質の一部、17.5日胚脳、成体脳、新生児海馬、妊娠6.5日から8.5日までの子宮脱落膜、肝臓、腎臓、繊維芽細胞由来培養細胞が現在解析を終了している。前述の様に各ライブラリ約1000クローンを解析し、全体では解析クローン数、約18.000クローン、遺伝子種は約7500種類となった。3′特異的ライブラリの作成効率は10^6クローン/total RNA 1μgと非常に良く、これが8.5日胚心臓原器や、脳の一部分のライブラリ作製などにつながった。遺伝子の発現地図はノザンブロッティングを数千回くりかえしたのと同等の情報を持っている。今後もさらにライブラリ数を増やし、遺伝子発現の公開データベースとして活用していく予定である。
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