前年度までに、哺乳類精巣決定遺伝子のひとつであるSryと相同性の高いSox遺伝子のcDNA(mdksox2)をメダカ胚から単離し、発現部位を同定解析した。その結果この遺伝子は、神経細胞になりうる細胞系列で発現している事を見出した。今年度はこの遺伝子の機能をアンチセンスDNAを胚に微量注入する事により解析を試みた。注入したメダカ胚の内受精後2日目までに23%までが神経管が細く、然も視蓋が顕著に小さくなっていた。しかし、4日目では、対照群との区別がつかなかった。この事は、mdksox2は未分化細胞が神経細胞になる潜在能力を保つ機能を有し、この機能が抑制されたために神経細胞への増殖文化が抑えられ、結果的に、神経管等の小さな胚が形成されたものと考えられる。しかし、アンチセンスDNAは胚内で分解されたため、4日目には違いが見出されなかったものと考えられる。 また本年度はSry類似Sox遺伝子群の全ての単離をメダカゲノムから行い、Sox遺伝子群のRFLPとRAPDによる連鎖群とを組み合わせて染色体上にマッピングを行った。その結果、Sry類似Sox遺伝子群は9つ存在する事がゲノミックサザン解析で明らかとなり、全てが常染色体性である事が判明した。ヒトのSry及びSox遺伝子群を考え合せると、メダカの性染色体がヒトの性染色体とは異なる起源を持つ可能性を示唆している。
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