研究概要 |
1.酸性成分による土壌からの金属成分の溶出挙動の解析 重金属に汚染された土壌試料からの酸性雨中の酸成分による溶出挙動について検討した。土壌中の主要成分については,まずアルカリ土類金属がCa→Ma→Baの順で溶出した後,土壌の緩衝作用が失われるにつれて,さらにAl,Feが溶出した。微量成分についてはNi,Co→Zn,Cd→Pb,Cuの順で溶出した。このことから,Ni,Coは降水中に溶解しやすく,汚染が広範囲に広まるのに対し,Zn,Cd汚染は局所的にとどまるが,Ca,Mg等のアルカリ土類金属の溶出が進み,土壌の緩衝力が失われた時点で溶出が始まることが明らかとなった。 2.溶出金属の水生微生物における蓄積 土壌からの溶出が確認された重金属イオン(Ni,Co,Zn,Cd,Pb)を培養液中に個別に加えてラン藻を培養後、細胞壁画分および細胞質画分に分画し,それぞれの重金属含有量を測定した。必須性の高いZnは細胞内部に取り込まれ易く,それ以外の金属は細胞壁画分のほうに高い濃度で分布した。Pbは大部分が細胞壁画分に存在した。ラン藻に対するPbの毒性が他の金属と比較して低いのは,細胞内部への侵入が抑えられることが一因と考えられる。 3.水生微生物における重金属の変換 ラン藻体内における重金属の存在形態について検討するために,上記の水溶性画分を高速液体クロマトグラフィー/誘導結合プラズマ質量法により分析した。Zn,Cd存在下で培養したラン藻については,メタロチオネイン(MT)が誘導され,アミノ酸分析を行った結果,1分子中に10〜11個のシステインを含有していた。Co,Ni,PbストレスではMTの誘導は確認されなかった。
|