研究概要 |
窒素成分の変換が起きる水田生態系とその周辺の小河川生態系を取りあげ、窒素成分の変化に伴って温室効果ガスの一つである亜酸化窒素が生成され、あるいは分解されていく過程を調査によって明らかにした。 調査測定は,地下水と湧水の硝酸態窒素汚染が進んでいる埼玉県岡部町をフィールドとして行ない、水田と小河川からの亜酸化窒素発生フラックス、溶存亜酸化窒素濃度、亜硝酸、硝酸などを月1回程度の頻度で継続的に実測した。水田では、6月、7月といった湛水初期に亜酸化窒素のフラックス及び溶存態亜酸化窒素の減少が起きた。しかし、中干し後の8月の調査、さらに、殆ど水を入れなくなる9月では、おそらく還元的状況が十分に保たれず、亜酸化窒素の分解は見られなかった。小河川では水田の10倍近くの亜酸化窒素のフラックスが観測された。対象とした水田と小河川を比較すると、流入したNO3のうち除去される割合は、20%前後となっているが、水田の方が若干高い。流入したNO3と亜酸化窒素に対する、大気中へ抜ける亜酸化窒素量の割合では、夏期には水田の方が1.3%と、その割合が高いが冬期には両者が同程度になっている。また、面積当たりのNO3除去量では、水深が両者では大幅に異なるので、単純には比較できないものの、河川の方が水田よりその値が高くなっている今回の結果から、十分に無酸素条件を確立した水田の湛水初期のような状況下では亜酸化窒素が生成しにくいことが示唆された。一方、有機汚濁を受ける小河川では状況によって亜酸化窒素が活発に発生したり分解したりしていることがわかった。
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