研究概要 |
急速な人口増加と経済発展を続ける開発途上国では,特に都市部への人口集中によって水質汚濁問題が深刻化している.途上国では下水はほとんど無処理のまま垂れ流しの状況にあり,適切な下水処理施設を整備していくことが緊急課題となっている.途上国の現在の経済状況等を鑑みると,その下水処理システムの導入には日本のような高級処理法(活性汚泥法)をそのまま転用するのではなく,途上国の実状に適した低コスト処理技術を適応していくことが望まれる.本研究の目的は,汚泥保持能を向上させた改善型セミパイロットスケール上昇流嫌気性スラッジブランケット(UASB)リアクターと,自然通気による好気性スポンジ担体充填散水ろ床を直列につなげる,低コスト(嫌気プレトリ-トメント+好気ポストトリ-トメント)システムを開発することである.実下水(スクリーン通過後の都市下水)の連続処理実験により,25℃条件下における,有機物除去特性,SS保持特性,UASBリアクターにおけるガス生成特性及びCOD物質収支を解析し,このプロセスの有機物,SS除去に関するフィージビリティについて検討した. その結果,本研究で開発したリアクターは,COD除去率は75%を許容し,短い処理時間で中程度の処理性能を得ることができた.また本プロセスにより,メタンガスとして下水中のCODの約35%がエネルギーとして回収され,かつその余剰汚泥生成量は現行の標準活性汚泥法の30〜40%程度に抑制されており,本システムが現在途上国で求められている下水処理システムの面的な整備に適したものであることが実証された.今後の課題として,後処理槽の改良によりCOD除去効率を更に改善するとともに,そのリアクターでの硝化・脱窒効率の改善が残されている.
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