化学物質の環境リスク分析において用いられた各種の仮定や、モデルパラメータの不確実性の処理は、計算結果の信頼性を評価する上で重要である。また、分析、評価という順に判断プロセス介在してくるにつれて、モデルの構造を明解に関連する人々に伝え、分析枠組みや結果そのものに説得性を上げてゆくことが重要となってくる。本報告では、そのために開発された支援ソフトウエアDemos(Decision Modelling System)を用いて化学物質の環境リスク分析をおこなった例を示しながら、上記の論点について考察した。 化学物質の環境リスクアセスメントとは、ある化学物質の環境へのまたは環境へのまたは環境を経由して曝路された場合の有害性を見積もることである。評価実施時点において利用可能なデータのみを用いるため、新たな知見が得られるとそれに応じて改良がなされることとなる。したがって、リスク評価においては、あらたに得られる知見がリスク評価の精度や説得性を向上させうるかといった有用性の評価が重要である。本報告では、そのための指標の開発と事例適用を行った。指標としては、EVIU(Expected Value of Including Uncertainty)、EVPI(Expected Value of Perfect Information)の2つをとりあげた。事例として底泥に残留した有機塩素系化合物クロルデンに対して本手法を適用した。代替案としては底泥の浚渫をとりあげた。浚渫量の目標値はADIよりもとめた。東京湾、大阪湾底泥に対して評価モデルの不確実性を確率分布として与え、モンテカルロシミュレーションによりパラメータの重要度を決定した。
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