室内実験および野外調査によおて、サンゴおよびサンゴ礁における有機無機炭素生産量および大気・海水中の二酸化炭素濃度変動を測定し、二酸化炭素吸収固定の可能性を確立した。 (1)室内実験(サンゴによるCO2吸収・固定実験) 琉球大学付属熱帯生物圈研究センターの屋外水槽(3m×4m×0.5m)で塊状サンゴ(キクメイシ)の飼育実験をおこなった。 造礁サンゴの代謝量として、一日の有機炭素固定量(OP):(36mmo1/m2/day、無機炭素生産量(IP):14mmo1/m2/day、有機炭素生産/無機炭素生産の比(OP/IP):2.6が得られた。有機炭素生産(OP)と呼吸量(R)との比は2であり、呼吸量の2倍の生産量があり、効果的にCO2を吸収できる。 (2)野外調査(サンゴ礁生態系による生物代謝量の観測) 宮古島保良湾のサンゴ礁において、塊状サンゴを透明プラスチック製のドームで被って、サンゴ礁生態系による群集代謝量の測定実験をおこなった。 有機炭素生産(OP)と無機炭素生産(IP)の比は1.5-2.5であった。これは、光合成による有機炭素生産量が石灰化による無機炭素生産量を上まって、その比が0.67以上であり、サンゴ礁生態系としても潜在的にCO2の吸収傾向にあり、二酸化炭素が吸収・固定される結果を得た。 (3)今後の課題 セジメントトラッフによる予察的な観測から、サンゴ礁で生産された余剰の有機物が粒子状有機物として、サンゴ礁から外洋に向けて輸送されることがわかった。今後、潮流、水の交換率、地下水の寄与等を含めて具体的な評価をおこなう必要がある。 実行可能なCO2吸収・固定法としてのサンゴ礁の有効性を確立するためには、とくに有機物分解プロセスと大気-海水間のCO2フラックス収支を長期間にわたって評価する必要がある。
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