研究概要 |
ミオシン結合蛋白質の一つC-蛋白質はミオシンの集合に関わる他、筋原繊維内の弾性繊維蛋白質コネクチンとの結合性をもち、サルコメア構造の形成で重要な役割をもつ。前年度報告のように、我々は既にニワトリ心筋C-蛋白質cDNAを分離、全構造を決定した。このcDNA プローブと特異抗体を用いた解析により、ニワトリでは心筋はもとより骨格筋でも発生初期に、心筋C-蛋白質が主要成分として発現されることを見出した。さらに、ニワトリ心筋C-蛋白質cDNAの解析の過程で、15アミノ酸残基からなる領域(挿入配列)の有無により異なる2種の心筋C-蛋白質変異体を見出したが、最近の知見をもとにこの領域のアミノ酸配列の意義を検討した結果、この部位はC-蛋白質の機能制御に関わる重要なリン酸化部位であることが明らかになった。両者の発現パターンをRT-PCR法により解析の結果、発生過程を通じてでは心筋では挿入配列のあるタイプが、骨格筋では挿入配列がないものが主であることが明らかになった。 次に、ニワトリで得られた上記事実を哺乳類でも検証する目的で、マウスの発生過程でのC-蛋白質アイソフォームの発現の特徴を調べた。既に知られたヒトC-蛋白質cDNAをプローブとして、マウス骨格筋(速筋型、遅筋型)C-蛋白質cDNAを得、これらとマウス心筋C-蛋白cDNA(Kasahara et al.,1994)を用いて、ノーザーンブロット法により親および胎児筋での発現を調べた結果、親では心筋、ヒラメ筋(遅筋)ではそれぞれ心筋型、遅筋型C-蛋白質のみが検出されたが、代表的な速筋とされる長指伸筋(EDL)では速筋型、遅筋型いずれもが検出された。また胎児や新生児では、心筋C-蛋白は心筋では発現されるものの、骨格筋ではニワトリの場合と異なり、心筋C-蛋白質の発現は全く見られなかった。心筋C-蛋白質の役割を考える上でニワトリとマウスの違いは興味深い。
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