研究課題
308アミノ酸よりなるhnRNP D蛋白質は、その中央部に約80アミノ酸よりなるRNA-binding domain(RBD)をふたつタンデムに持ち(以下、N-末端側よりRBD-1とRBD-2と呼ぶ)、C-末端側には、RGG-boxとして知られるアルギニンとグリシンにとむ領域をもつ。多くのRNA結合蛋白質が、このようなモジュール構造をとるが、それぞれの構成単位が蛋白質全体の機能にとってどのような役割を果たしているのかは十分に解明されていない。平成7年度の本研究において、以下の点を明らかにすることができた。(1)hnRNP Dタンパク質が示す配列特異的結合能は、単独のRBDのみをもつリコンビナント蛋白質のみでも示された。従って、本蛋白質のRNA結合能は、基本的に単独のRBDによって果たされれると考えられた。ただしRBD部分のみでは、全長の蛋白質が示す結合親和性(Kd値)より低い活性しか得られないため、RGGドメインや機能が不明なN-末端側も直接あるいは間接的に結合活性に影響を及ぼすものと推定された。(2)altemative splicingによりRBD-1に短いアミノ酸領域を含むアイソフォームと含まないものの間で、配列に変異を持つ基質RNAに対する親和性に差が認められた。(3)RBD-1にalternative splicingによる短いアミノ酸をもつ112アミノ酸よりなるリコンビナント蛋白質(以下、D1Hと呼ぶ)の大量発現系を構築した。T7プロモーターを用いて、1リットルの大腸菌培養液より数10mgの可溶性D1Hを調製することができた。(4)D1Hを^<15>Nあるいは^<15>N+^<13>Cで標識し精製した後、二重あるいは三重共鳴NMR法により、D1H蛋白質の主鎖の帰属をすべて完了した。その結果、D1Hは、3個のβ-strandと2個のα-helixよりなることが明らかになった。これ以外に、さらにβ-strand様の箇所が2カ所見つかり、そのうちの1つはalternative splicing部位に存在していた。現在、側鎖情報を抽出しており、まもなくD1Hの立体構造が得られるものと期待される。
すべて その他
すべて 文献書誌 (2件)