研究概要 |
現在我々は、RasによるRafの活性化には膜結合型のチロシンキナーゼであるSrcが必要であると考えて実験を進めている。平成7年度は培養細胞を用いたin vivoの系によって、RasによるRafの活性化へのSrcの関与の有無について検討を行った。ヒト胎児腎細胞由来HEK293細胞において活性型Rasを発現させるとRafの活性化が観察されるが、この時に活性型Srcを共発現させるとRafの活性は相乗的に上昇することが観察された。また活性型Src単独でもRafを部分的に活性化した。この活性型SrcによるRafの活性化はRasの優性抑制型変異体(Ras[S17N])によって強く抑制された。また細胞にチロシンキナーゼの阻害剤であるハービマイシンAを作用させたところ、活性型RasによるRafの活性化が抑えられた。さらに我々は優性抑制型変異体であるRas[G12V,C186S]がRafを細胞質に捕捉することによって活性型RasによるRafの活性化を阻害してしまうことを見い出したが、この変異体は活性型SrcによるRafの活性化や活性型Rasと活性型Srcの共発現によるRafの活性化も抑制した。これらのことから、RasやSrcによるRafの活性化は細胞膜上で起き、その際RasとSrcが互いに不可欠であると思われる。現在、in vitroの系を用いて実際にRasとSrcが協同的にRafを活性化するかどうかを検討中である。
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