転写において、RNAポリメラーゼがDNA上のプロモーターに結合した後には、プロモータークリアランスと呼ばれるRNA伸長の障害期があると仮定され、原核、真核を問わず、短鎖RNAの合成・解離、一時停止が起こるが、その内容は未知であった。RNA切断因子のような新しいクラスの転写調節因子は、この時期に働くと考えられており、全生物でプロモータークリアランスの内容の解明が、転写調節の機構の研究の最も新しいハイライトとなっている。 申請者らは、樹脂に固定化したDNA上で転写をおこなって、転写複合体に保持されたRNAと解離したRNAとを低速遠心で分離するという速度論的方法(固定化オペロン法)により、新種の転写複合体と、従来の直列モデルと異なる新しい反応機構を見出した。つまり、プロモータークリアランスは、分岐した経路をもつ過程で、第二の経路は、新たに発見されたMoribund Complexをへて、既知のDead end Complexに至る道である(J.Mol.Biol.に発表)。 速度論的に提案された新しいモデルの生化学的な証明のために、市販の液体クロマトグラフィー装置を活用した、速度論的方法を開発し、Moribund Complexが転写開始後早くとも30秒以内には、形成されていることを見出した(Nuc.Acids Res.に発表)。また、蛋白フットプリンティングに適した大腸菌RNAポリメラーゼを設計、構築した。 IEEE Trans IAの論文について、米国応用電気電子学会より、年間論文最優秀賞を授与された。
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