研究概要 |
アクチビン-ホリスタン系による造血幹細胞分化の制御機構を理解するために、造血系細胞におけるアクチビンのシグナル伝達系の全容を解明することを目的として以下のような研究を実施した。 1,ヒト前赤芽球系細胞K562にはアクチビン受容体IA、IBおよびIIBが発現しているが、IIAの発現は認められないことがノーザン法によりわかった。また、アクチビンにより分化される際に高分子IIB受容体の発現量が有意に増加した。これは、アクチビンによるK562細胞の分化過程において、アクチビンシグナルの質的、量的変換が必要であることを示唆している。 2,ホリスタチンの存在下で、アクチビン受容体IAおよびIIAを強制発現させたCOS細胞と^<125>I-アクチビンを反応させたところ、アクチビンは全く受容体に結合しなかった。ホリスタチンはアクチビンの受容体への結合を阻害することでアクチビンの作用を抑制することがわかった。 3,ヘパラン硫酸プロテオグリカンに高親和性を示すホリスタチンFS-288はアクチビンと結合したまま、COS細胞やマウス下垂体細胞表層に強く結合し、短時間のうちに細胞内へ取り込まれることがわかった。さらに、取り込まれたアクチビンはリソゾーム酵素に低分子ペプチドにまで分解されて細胞外に放出されることが判明した。この結果は、ホリスタチンには、アクチビンとその受容体間の相互作用を阻害してシグナル伝達系を遮断する役割(2,の結果)以外に、アクチビンを積極的に分解・代謝してしまう役割のあることを示唆している。細胞増殖・分化因子のプロテオグリカンを介した新しい活性調節機構を提案するものである。
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