研究概要 |
1.赤白血病と赤血球特異的転写因子GATA-1 :エリスロポエチン(EPO)受容体およびGATA-1mRNAは赤白血病の症例のみに発現しており、GATA-2は単球性白血病以外の症例すべてに発現が認められた。また赤白血病(M6)の経過中に骨髄白血病(M2)に移行した症例を経験し、EPOR、GATA-1mRNAはM6の時期には顕著に発現していたが、M2の時期にはこれらの遺伝子の発現は極端に低下していた。そこでM2由来のHL-60細胞株にGATA-1を過剰発現させたところ、glycophorinが新たに発現した。したがってM6の赤芽球形質発現にはGATA-1が深く関与していることが示唆された。 2.EPO受容体構造とアポトーシス抑制シグナルの解析:分子クローニングしたヒトEPO受容体完全長型(EPOR-F)細胞内領域欠損型(EPOR-T)を、IL-3依存性Ba/F3細胞に挿入しトランスフェクタントを作成(Ba/F3-F,Ba/F3-T)したところ、EPO受容体の細胞内領域には増殖刺激シグナルを伝達する系のほかにアポトーシスを抑制するシグナルを伝達する機能が存在することが示唆された。Ba/F3-T細胞内では、IL-3除去により誘導されたアポトーシスがEPO添加により抑制できず、このとき、c-jun遺伝子が誘導されないことを見出し、Ba/F3-T細胞内にc-junを遺伝子導入し恒常的にc-junを発現させたところEPOのアポトーシス抑制機能が回復した。このことによりEPO受容体を介したシグナル伝達には増殖刺激シグナルとアポトーシス抑制シグナルが存在し、欠損した細胞内領域部分がアポトーシス抑制シグナル伝達に必須であること、またc-jun遺伝子はこのアポトーシス抑制に重要な役割を担っていることが明らかになった。さらにEPOR-Fを高発現しているUT-7細胞にEPOR-Tを挿入したトランスフェクタントを作成したところ、EPOR-Tの発現量に相関して、アポトーシスが誘導された。このことはEPOR-Tのアポトーシス抑制シグナル伝達を阻止する機能は普遍的なものであることがわかった。
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