研究概要 |
[方法と結果] 6週令雄のA,BALB及び(BALBxA)F1マウスに1mg/gbwのウレタンを腹腔内投与し、120日後に肺腫瘍数を調べた。平均腫瘍数は各々、24,1,5で、BALBマウスが優性の肺発癌耐性遺伝子を有することが確認された。次に、(AxBALB)F1xA backcrossマウス(雄66匹、雌64匹)を同様にウレタン処理し、肺腫瘍数を調べた。平均腫瘍数は、雄で13±7(mean±SD).雌で12±7であった。雌雄で形質の差が見られなかったため、両性のマウスをプールし、その中から腫瘍数に関し、両極端の形質を示すものを選択して連鎖解析の第一歩であるスクリーニングを行った。つまり、腫瘍数22以上の固体(High group)14匹と5以下の固体14匹(Low group)をbackcrossマウスより選び出し、マイクロサテライトマーカーを用いたgenotypingを行った。約30のマーカー遺伝子座をスクリーニングしたところ、chromosome 11で、high gorupにhomozygoteが多く見られ、low groupにheterozygoteが多く見られる傾向があった。この差(p=0.003 by Fisher′s exact test)は、chromosome 11に耐性遺伝子座が存在することを示唆するが、全ゲノムレベルでは有意な連鎖とは判定できない。したがって、残りの中間的形質を示すbackcrossマウスのgenotyping、さらには、新しいセットのbackcrossないしintercrossマウスを解析し、連鎖を確認する必要がある。 [考察] 今年度の研究ではBALBマウスの耐性遺伝子座のマッピングには至らなかった。Chromosome 11に連鎖の可能性のある染色体マーカーを発見したが、この連鎖は比較的弱いものである。当初、BALBマウスの耐性遺伝子座は単一と考えていたが、複数である可能性も出てきた。一方、現在のところ、連鎖のスクリーニングは全ゲノムの約75%について行われたのみであり、残りの約25%に耐性遺伝子が存在することも考えられる。いずれにしても、さらなる解析が必要である。
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