研究概要 |
1. 膵癌に関しては,6q,12qにおける共通欠失領域を特定し,YAC,BACによるコンティグを成,さらに発現している遺伝子のスクリーニングを行った。12qにおいては2個の候補遺伝子にいて異常の有無を調べたが,構造異常は見られなかった。尚,12q21のDUSP6遺伝子では,多の膵癌細胞株で発現の減弱や消失が観察されたため,現在,発癌との関連についてさらなる検討を加えている。また,膵液中の細胞を用い,膵癌で高頻度に検出されている9p,17p,18qの欠層と8q,20qの増幅を指標にFISHによる診断を試みた結果,FISH法が非常に有効であり,かつ8qの欠失がこれらの領域の中でもっとも初期に生じている異常であることを明らかにした。 2. 子宮内膜癌については,前年度までに10q25-q26に同定した染色体欠失領域を100-kbに特定した。さらに,この領域の欠失は子宮内膜異型増殖症においても高頻度に見られ,10q25-q26の欠失が子宮内膜の発癌過程における初期変化であり,かつ子宮内膜異型増殖症が前癌病変であることが示唆された。また,子宮内膜異型増殖症においてDNAミスマッチ修復異常の関与も高頻度であり,BAX遺伝子,IGFIIR遺伝子,PTEN遺伝子にも異常が生じていることを明らかにした。 3. 肺癌において,16q24に狭い範囲の高頻度欠失を検出した。16q24にはH-cadherin遺伝子が存在するので,さらなる検討を加えた結果,高頻度にこの遺伝子の発現が消失しており,また,定現が消失した腫瘍ではプロモーター領域の高頻度のメチル化を明らかにした。尚,胃癌でもこの領域にLOHが検出されたが,H-cadherin遺伝子の異常の関与を示唆する結果は得られなかった。
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