研究課題
最近、我々は新しい癌遺伝子ostを単離しその構造と機能について検討している。1.ラットost遺伝子のfull length cDNAの単離:発現ベクターλpCEV27を用いて、ratosteosarcoma cell line(ROS)からのcDNA libraryを作製した。NIH3T3細胞でのtransfection法でtransforming活性のあるcDNAsをいくか選択し、ostを単離した。最初に単離したost遺伝子は3.8kbで5′側が欠失したものであった。これは強いtransforming活性とヌードマウスでの造腫瘍性を有し癌遺伝子であると考えられた。次に同じCDNA libraryよりfull length cDNAを分離した。その大きさは5kbで、弱いtransforming活性を有していた。2.ost遺伝子の発現:正常ラットの組織での検討からproto-ostは、脳での発現量が最も多く、さらに心臓、肝臓、腎臓、肺、平滑筋、前立腺にも発現していることがわかった。また、Ost蛋白は主に細胞質に存在し、32pで標識した細胞でリン酸化蛋白として見いだされ、主にセリンがリン酸化されていることがわかった。脳の免疫染色の結果、とくに神経細胞の細胞質やα-tanycytesでその発現が顕著であった。3.小児期悪性固形腫瘍でのost遺伝子の発現:小児期悪性固形腫瘍のうち、神経芽腫(n=19)、Wilms腫瘍(n=5)、横紋筋肉種(n=7)、Ewing肉腫・PNET(n=10)の細胞株でost遺伝子の発現を検索したがいずれも陰性であった。腫瘍組織での検討でも今まで陽性所見は得られていない。4.ヒトost遺伝子の単離と構造解析:ヒト胎児脳のcDNA libraryを用いて、現在施工中である。
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