研究概要 |
我々は粘液細胞過形成が膵癌発生の前癌病変である可能性があることを報告してきた。今回、非膵癌患者の膵液の塗沫標本でKi-ras変異の有無を検索し、膵液のKi-rasの変異の有無を検索することにより膵癌発生の前癌病変の有無が診断可能か検討した。対象は過去に採取された非膵癌患者の膵液の薄層塗沫標本で、細胞の診断がGrouplおよび2であった18症例である。これらの内訳は、ほぼ正常と診断される膵管上皮6例、粘液細胞過形成12症例である。Ki-rasの点突然変異は膵癌において特にcodon12に変異が高頻度であるので、codon12について検索した。結果および結論 : 正常の膵管上皮には一例もKi-rasの突然変異は認められなかった。粘液細胞過形成は12症例中8症例 (66.7%) に突然変異が認められた。突然変異の内容は、GGT (Gly)→GAT (Asp) が4例、GGT (Gly)→GTT (Val) およびGGT (Gly)→が各2例で、Aspが最も多く、次いでVal,Argであった。この傾向は我々が切除膵 (非癌膵) の粘液細胞過形成について分析した結果と良く類似していた。すなわち,膵液のKi-rasの検索することにより膵癌発生の前癌病変の有無を診断でき、膵癌の早期発見に役立つことが示唆された。
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