研究概要 |
制がん性ヌクレオシドDMDC(我々の研究室で開発した制がん性ヌクレオシドで、固形がんを対象にした第一相臨床試験中)を活性本体とする、様々な飽和および不飽和のアシル基を有する制がん性疑似リン脂質である5′-フォスファチジルDMDCを合成した。リン脂質誘導体の化学合成は一般的に繁雑であるが、我々が開発したホスフォリパーゼDの触媒するホスファチジル基転移反応を応用したホスファチジン酸エステルの合成法を用いることにより、5′-フォスファチジルDMDCを簡便に合成することができた。 合成した5′-フォスファチジルDMDCの制がん活性をin vivoマウス腫瘍を用いて母化合物のDMDCと比較検討し、また、グリセロール部アシル基の制がん活性への効果を検討した。その結果、5′-フォスファチジル体に変換することで、DMDCの制がん活性が増強されることが明かとなった。ジパルミトイルタイプの5′-フォスファチジルDMDCが、特に優れた制がん活性を示し、例えば、腹腔移植マウスM5076肉種系では、ジパルミトイルタイプの5′-フォスファチジルDMDC投与群(Day 1-5, 300mg/kg/day)は、全マウスが60生存であったが、等モル量を投与したDMDC群では、1群4匹総てが60日以内に死亡した(平均生存日数45日)。 また、ラットに制がん性疑似リン脂質を経口投与したところ、期待しようにリンパ行性選択的に吸収されることが明かとなった。
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