研究概要 |
(1)CATA-1因子は赤血球造血に必須であり、さらに巨核芽球、肥満細胞系の細胞にも発現し、それらの分化に必要な遺伝子の発現を制御していることが既に明らかにされている。さらに、患者から得られた白血病細胞について調べてみると、この場合も巨核芽球や赤芽球系の形質を示す細胞にGATA-1の発現がみられた。(2)GATA-2やGATA-3について白血球由来培養細胞株等で検討したところ、GATA-2は分化段階の若い段階からGATA-1より広範囲に発現しており、骨髄幹細胞のマーカーとされるCD34が陽性の細胞に高率に発現していた。また、GATA-3は造血系ではTーリンパ球に特異的に発現しているが、T-細胞受容体や各種サイトカインの遺伝子の上流には多くのGATA因子結合配列が見出されているので、GATA-3がこれらの遺伝子の発現を制御している可能性が推測される。患者由来の白血病細胞についても、その分化形質発現とGATA-2,GATA-3発現の関係は正常造血細胞の場合とほぼ同様であった。このように、白血病細胞でのGATA因子発現様式は正常血球分化における対応する各細胞のものにほぼ一致しており、GATA因子発現の解析は未分類の白血病細胞の分化方向の診断に有用な手段となると考えられた。(3)NF-E2因子も赤血球系を中心とした細胞特異的遺伝子発現に重要な転写因子であり、その作用機構の解析を行った。NF-E2はp45と小Maf両成分のヘテロ2量体として機能し、小Mafのホモ2量体はその作用を抑制することを既に明らかにしている。本年度には小Mafのホモ2量体の赤血球分化促進作用や複数の種類のp45等のCNCファミリーの因子の存在が見出され,その作用機構や役割を解析中である。
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