研究概要 |
IL-12はTh1、CD8T細胞、NK細胞の活性化、ガンマインターフェロン産生増強など現在考えられる抗腫瘍免疫を担う免疫系のほとんどすべてを活性化させるサイトカインである。したがって、腫瘍細胞近傍に存在し、腫瘍抗原に感作された細胞をさらに活性化する目的で、腫瘍細胞にIL-12遺伝子を導入してIL-12を産生させる遺伝子治療の技法を応用して、免疫機構を高め、抗腫瘍免疫療法の基礎を確立することを目的としてマウスの系を用いたモデル実験を行った。IL-12はp40とp35からなるヘテロダイマーであり、p70の形をとった時にのみ活性を発揮する。そこで、p40、p35を単独でレトロウイルスに組み込んだ発現ベクターと、p35とp40遺伝子をIRESで繋いだレトロウイルス発現ベクターを作成し、これらを単独または組み合わせて細胞に導入し、IL-12産生を検討した結果、p35とp40をそれぞれ組み込んだベクターを両方導入した細胞では極く弱いIL-12活性が発現されたのみであったが、p35とp40の遺伝子をIRESで繋いだベクターを導入された細胞では44U/mlという強いIL-12の産生が見られた。co126腫瘍細胞にこれらのベクターを導入して、移植実験を行った結果、次の様な結果が得られた。1)p35、p40遺伝子を別々に導入したco126腫瘍は皮下に移植されると、やや増殖した後退縮し、移植後30日で消滅した。2)p40遺伝子蚤を導入したco126は腫瘍の増殖が増大した。3)1)のマウスにco126の再移植を行うと腫瘍は増大しマウスは腫瘍死した。4)p35とp40をIRESで繋いだベクターを導入されたco126は移植後やや増殖したが、その後腫瘍塊は消退し、再移植されたco126は増殖せず、腫瘍移植片は生着しなかった。すなわち免疫記憶が成立した。5)以上の結果はB16メラノーマ細胞を用いても再現された。次に、腫瘍細胞排除に働いた細胞を特定する目的で、腫瘍を排除したマウスの脾細胞を抗Thy1,抗CD4,抗CD8と補体で処理し、in vitro細胞傷害作用を見ると抗CD8と抗Thy1で活性が無くなるところから、CD8T細胞が抗腫瘍活性を発揮する主要な細胞であると考えられる。
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