研究概要 |
HBxに対する2種類のアンチセンスおよびセンス・フォスフォロチオエイト・オリゴヌクレオチド(AS1,AS2,S1,S2)を作製し、以下の実験を行った。 1.20週齢のトランスジェニックマウスに1mgずつ週3回腹腔内投与したところ、AS1,S1投与マウスでは門脈周囲に炎症細胞の浸潤が認められた。AS2,S2投与マウスでは同様の現象は認められなかった。すなわち、同量の投与でも、塩基配列(組成)によっては肝障害を認めることがある。 2.1週齢のトランスジェニックマウスに、量を調節しながらAS2,S2を投与したが、成長障害を起こしマウスは数週で死亡した。2週齢からの投与においては、成長障害は認められず、対照トランスジェニックマウスと同様に成長した。 3.16週齢のトランスジェニックマウスへの1mgのAS2の7日間連続投与で、トランスジェニックマウス肝に発現しているHBxのmRNAは、極めて低レベルにまで低下した。また、この際マウスアルブミン遺伝子の発現には変化は見られなかった。また、S2(センス)投与マウスにおいても軽度のHBx発現低下が見られたが、これはいわゆるトリプルDNA形成のためと思われた。 4.1mg週3回の投与によってもトランスジェニックマウス肝におけるHBx蛋白の発現レベルは極めて低いレベルとなったため、この投与法を採用して長期間投与を行うこととした。 5.AS2の8週間連続投与により、細胞質の空胞化を特徴とする肝の前癌病変の出現が有意に抑制された。また、この前癌病変においては、DNA合成の亢進していることがわかっているが、AS2の8週投与はこのDNA合成細胞数も有意に抑制した。すなわち、HBx蛋白の発癌作用を抑制したと考えられる。
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