我々はマウス第17番染色体Qa/Tla領域に存在する多数の非古典的組織適合クラス1抗原遺伝子の一つであるQ5遺伝子が細胞の癌化に伴って発現され、その遺伝子産物である細胞表面物質(Q5抗原)が癌抗原として機能すること、またその癌細胞特異的発現が遺伝子転写のレベルで調節されていることを既に明らかにした。この機構を癌に対する遺伝子治療モデルに応用するために、この癌細胞特異的転写調節の機構について検討した。Q5遺伝子上流域DNAの支配下に置かれたルシフェラーゼ遺伝子の、SV40largeT抗原温度感受性変異遺伝子によって形質転換されたマウス繊維芽細胞に於ける発現を観察する実験系を作製して、癌細胞特異的転写に関与するエンハンサー/プロモーターの構造と機能に関する研究を進めた。Q5遺伝子上流3.5KbpのDNA全塩基配列を決定し、その色々な断片のエンハンサー活性を測定してエンハンサー構造の概略を明らかにした。更に詳細について検討中である。またこれを遺伝子治療モデル実験に用いるために、この調節領域の支配下に同種異系の主要組織適合遺伝子をおいたものを作製してその癌細胞特異的発現を試験管内実験系で確認し、更に現在この発現系を非増殖型アデノウイルスベクターに組み込んだものを作成中である。
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