研究概要 |
DNA依存性プロテインキナーゼ(DNA-PK)が放射線感受性の決定に関与しているか否かを検討する目的で、放射線高感受性で、照射後速やかに死に至るヒトリンパ性白血病由来MOLT-4細胞からDNA-PKの精製を試みた。低張液処理によって細胞を破壊し、単離した核を塩抽出した後、DNA依存的なα-カゼインのリン酸化を指標として、3段階のカラムクロマトグラフィー(イオン交換2回、DNAアフィニティー1回)により精製を行った。精製画分にはSDS-PAGEによる見かけの分子量350kDa,85kDa,および70kDaの3本のポリペプチド(p350,p85,p70)が含まれていた。このうち後2者は抗Ku血清に反応した。 精製画分をさらにグリセロール濃度勾配遠心によりp350とp85/p70とに分離した。DNA-PKに特異的な基質を用いてp350とp85/p70のリン酸化能を検討したところ、リン酸化活性はp350で顕著で、p85/p70のみでは無視しうる程度であったが、p350とp85/p70が共存する場合にリン酸化能が大きく増強された。以上のことより、DNA-PKのリン酸化活性は、p350が担っており、p85/p70はその活性を増強する役割を果たしているものと推察された。 一方、DNA-PKの細胞内での機能を探る一環として、DNA-PKの阻害剤が照射後の細胞死の発現に及ぼす影響について検討をおこなった。予備的な結果ではあるが、照射前に阻害剤を添加しておくことによって、色素排除能を指標とした死細胞の出現が早められる傾向が認められた。 また、精製したDNA-PK各サブユニットに対する抗体の作製を試みた。抗体を得るには至らなかったが、今後も抗体作製を進め、得られた抗体を用いて、各サブユニットの量、存在様式等の細胞による違いを解析し、放射線感受性との関係につき検討を加える予定である。
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