研究概要 |
細胞表層レセプター分子Fasを介するアポトーシス誘導シグナルを明らかにすると同時に、Fasの生理的役割と機能を免疫系を含む色々な組織で明かにすることを目的に研究を行い、以下の結果を得た。(1)Fasを介するアポトーシス誘導刺激で特異的に活性化されるプロテインキナーゼDARKを見いだし、これがFas以外の刺激によるアポトーシス誘導時にも活性化されるアポトーシス特異的キナーゼであること、DARKがアポトーシス誘導に必須のプロテア-セであるcaspaseカスケードの下流で活性化されることを明らかにした。さらに、DARKを精製し、cDNAクローニングを行った。そして,caspaseによってC末端領域が切断除去されることにより、DARKが活性化されることを示した。(2)ヒト成人T細胞白血病ウイルス(HTLV-1)の発がん遺伝子Taxの作用を解析し、TAX蛋白質がFasを介するアポトーシス誘導シグナルを特異的に抑制することを、一過性の遺伝子発現実験により証明した。また、Taxはp53を介するアポトーシスも抑制すること、Taxのアポトーシス抑制能は転写因子CREBやNF-κBの活性化とは関係せず新しい分子機構によることを示唆した。(3)アポトーシス誘導能を有する抗マウスFasモノクローナル抗体PK-8を雌マウスに投与すると、卵巣において卵胞の顆粒層細胞と黄体の黄体細胞にアポトーシスが誘導され、黄体が生産する黄体ホルモンの低下と、排卵される卵細胞数の低下が認められた。また、Fas機能不全マウスであるlprマウスでは、加齢とともに未成熟卵胞数の増加と成熟卵胞数の低下が認められた。卵巣においてFasの機能していることを示した。
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