神経線維種症1型(NF1)が、がん抑制遺伝子であるNF1遺伝子の異常により発生することが知られている。しかし、NF1遺伝子は多くのエクソンからなる大きな遺伝子で、その異常を明らかにすることは極めて困難で、NF1患者の2割未満でしか遺伝子の異常は確定されていない。本研究では、患者NF1メッセンジャーRNAからcDNAを合成し、これを発現ベクターに組み込み、発現させた蛋白での異常をまず同定し、その情報をもとに遺伝子の異常を決定しようとするものである。 白血球内に異所性に存在するNF1メッセンジャーRNAを逆転写酵素とランダムプライマーを用いcDNAに合成した。そして、T7プロモーター配列を有したプライマーを用いてPCR増幅した。この増幅産物をテンプレートとしてビオチンで標識したリジンの存在下でNF1遺伝子の断片を発現させ、ビオチンでラベルされたNF1蛋白の断片を合成した。そして、合成した標識蛋白を電気泳動により分離し、蛍光法で蛋白を検出しその泳動度から蛋白レベルでの異常を解析した。その結果、NF1 cDNAからNF1蛋白合成に至る系を確立することが出来た。そして、異常を疑わせる例において現在cDNAの塩基配列の解析を行っている。 本研究は遺伝子産物である蛋白質を解析することにより遺伝子の異常を効率よく検出するシステムの確立をはかるものである。NF1 mRNAからNF1蛋白を解析する方法を確立するには、血球中mRNAが極めて微量であること、および非ラジオアイソトープ法で行うことの2点に大きな障壁が立ちはだかった。現在この2点の克服に目途がつき、cDNAの一部ではビオチンラベル蛋白の検出も可能となってきており、次年度にはシステムは完成するものと考えている。その暁にはNF1遺伝子異常の解析が急速に進むものと大きく期待される。
|