既存の一次スクリーニング法は、培養細胞を用いたものでも、担がん動物を用いたものでも、増殖期がん細胞の増殖能抑制効果に関する情報しか得られない。本研究で意図した第一点は、静止期にある培養細胞に被検物質を作用させその増殖能を失わせることができるか否かを判定し、固型がん組織内部の静止期がん細胞や休止期がん転移巣への治療効果に関する情報を得ようとするものである。第二点は静止期培養細胞に機能障害を引き起こすか否かを判定し、正常臓器細胞への毒性を予見しようとするものである。既存の制がん剤などを用いて検討した結果、本研究で意図した新しいスクリーニング法としての有用性の可能性が示された。年間数万という化合物や天然物が制がん性候補物質としてアッセイに提供されている現状を考えると、これらの検体から一次スクリーニングの段階で、出来るだけ多くの情報を提供できることは、制がん性候補物質のデザインにも資することになると考えられる。本スクリーニング法を用いて、もし、増殖期細胞と並んで静止期細胞の増殖能を失わせる物質が選別され、それが静止期細胞への機能障害が無いことが示されれば、固形がん組織全体の死滅あるいは増殖阻止が期待され、しかも高い選択毒性も期待できよう。一方、今までには殆ど知られていないが、栄養環境の悪い静止細胞の増殖能だけを阻害する物質が選別されるとすれば、既存の制がん剤との併用により固型がんへの効果的な治療効果が期待できよう。 今後、数多くの化合物についてランダムスクリーニングを行い、本スクリーニング法の有用性について結論を得たいと考えている。
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