ポジトロン断層法(PET)がんを質的に代謝診断でき、そ普及は癌制圧の基本的戦略の一つ柱となるが、サイクロトロンを用い病院内でて診断用薬剤を製造する等の人的経済的要因が、大きな障害となっている。癌診断法に適した院外供給可能な^<18>F標識薬剤を開発することを目的とし、蛋白質合成とアルキル基転移反応に関与する、^<18>F-メチオニン(MET)類似体の親化合物として^<11>C標識のethionine(^<11>C-ETH)およびpropionine(^<11>C-PRO)合成し、癌診断薬としての可能性を検討した。^3H-MET、^<14>C-ETHおよび^<11>C-PROの乳癌移植マウスにおける癌集積性は、^<14>C-ETH≧^3H-MET>^<11>C-PROの順であった。癌/脳と癌/筋比はは3薬剤とも同程度であったが、^<14>C-ETHと^<11>C-PROの肝への集積は著しく低く、癌/肝比はほぼ1であった。^<14>C-ETHと^<11>C-PROの癌集積性は、シクロヘキシミド処理による蛋白質合成阻害の効果やメチオニン負荷に対してMETほぼ同様の反応性を示した。代謝様式としては、^<14>C-ETHは蛋白質合成やアルキル基転移反応への関与していたが、^<11>C-PROではその寄与は認められなかった。 これらの結果は、^<11>C-ETHと^<11>C-PROは癌診断薬剤として^<11>C-METと比べ興味ある性質を有していることを示している。また、^<18>F標識ETHとPROが新たな癌診断薬剤となる可能性が示され、^<18>F標識薬剤の合成に入った。 ^<18>Fアニオンより^<18>F-fluoroethyl tosylateと^<18>F-fluoropropyl tosylateを合成した。しかし、L-homocystein thiolactoneとの反応により^<18>F-ETHと^<18>F-PROの合成では、再現性のある結果を得られず、動物実験には至らなかった。
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