この研究は、Caチャネルの蛋白キナーゼ(リン酸化)、ATP、細胞内蛋白などによる調節の特性とサブタイプの構造機能相関を解明するために計画された。本年度は、(1)Caチャネルに対するATPおよび細胞質蛋白の作用を心筋細胞および神経細胞で比較検討すること、(2)ATPおよび細胞質蛋白の作用をより単純な系で検討するために、外来Caチャネル遺伝子を発現させた細胞系を確立すること、の2点について研究を進めた。まず心筋Caチャネルについては、牛心臓抽出液にATPを付加したものをinside-outパッチのCaチャネルに作用させると、チャネル活動の回復が確認された。このとき、ATPをADP、AMPまたは非水解性ATPアナログで置換するとチャネル回復作用は弱くなったものの消失しなかった。このことは、ATPの作用が加水分解を伴うものではなくサイトへの結合などによることを示唆している。神経細胞のCaチャネルの検討は培養DRG細胞で行った。パッチクランプによりL型およびN型のチャネルが認められ、inside-outパッチにより両チャネルのrundownが起こることが確認された。L型チャネルに注目してATPおよび細胞質蛋白の作用を検討すると、チャネルの活動が回復することが判明したがその作用は心筋Caチャネルよりは弱かった。また、チャネル遺伝子発現系についてはCHO細胞とBHK細胞にウサギ心筋Caチャネル遺伝子を発現させた細胞を入手し、実験の準備を進めている段階である。また、モルモット心筋Caチャネル遺伝子のクローニングを進めている。
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