グルタミン酸トランスポータGLT-1はダルタミン酸取り込み阻害薬ジヒドロカイニン酸(DHK)によってそのグルタミン酸取り込みが抑制されるが、他のアイソフォームEAAC1はDHKによって抑制されない。この薬物感受性の違いを利用して、グルタミン酸トランスポータの基質結合部位同定を目的としたキメラ解析を行った。EAAC1とGLT-1のcDNAをタンデム方向に並ぶように一つのプラスミドに組み込み、recA^+の大腸菌を用いた相同組換によりキメラcDNAを得た。キメラ接合点は、あらかじめEAAC1及びGLT-1cDNAからPCRによって得たDNA断片をプローブとしたドットブロットハイブリダイゼーションによって限定した後、DNAシークエンシングによって決定した。キメラcDNAはXenopus卵母細胞に発現させ、DHKに対する感受性を検討した。膜貫通領域6から7にかけての領域を境にDHK感受性が大きく変化し、この領域内にDHK感受性の決定に与る構造が存在することが示唆された。さらに別の観点から基質結合部位同定の手掛かりを得るために、基質選択性の異なるファミリーの未知のメンバーのクローニングを行い、新しいNa^+依存性中性アミノ酸トランスポータASCT2のcDNAを単離した。ASCT2は、側鎖に高度な分枝や芳香環、複素環を持たない中性アミノ酸を高親和性に輸送した。ASCT2は、低親和性ながらグルタミン酸を基質とすることから、同一のファミリーに属するグルタミン酸トランスポータと似た形の基質結合部位を持つことが示唆された。さらに、ASCT2は、二つのNa^+と共役するグルタミン酸トランスポータと異なり、一つのNa^+と共役していた。キメラ解析から得られたDHK結合領域と、ASCT2とグルタミン酸トランスポータの一次構造と機能的性質の比較から得られた基質結合部位に関する情報をもとに、部位特異的変異導入による解析が進行中である。
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