gp160由来のペプチド鎖(gp160の全アミノ酸配列の70%をカバーする)を用いたヒトとマウスでのヘルパーT細胞のエピトープマッピングの成績をもとにエピトープの密在する領域の高次構造を解析し、同部位のmajor histocompatibility complexへの結合能、ヘルパーT細胞の認識頻度を分析した結果、800近いアミノ酸よりなる表面蛋白のなかでヘルパーT細胞のエピトープがオーバーラップして密在しているのはわずか6箇所に過ぎないことが判明した。同領域を完全にカバーする長鎖のペプチド(以下クラスターペプチド)を合成、精製した。また、同領域をV3ドメイン由来のHIV-1中和活性エピトープかつキラーT細胞エピトープであるP18ペプチドのC末端、N末端にそれぞれ連続して合成した。これらのペプチドで5種類のB10コンジェニックマウスを免疫して、HIV-1gp160特異的にキラーT細胞と中和活性を示す抗体の誘導能を検討した。その結果、エピトープペプチドでの免疫や、エピトープペプチドC末端にクラスターペプチドを連結したペプチドで免疫した場合には、キラーT細胞や中和抗体の誘導は弱いのに対し、エピトープペプチドN末端にラスターペプチドを連結したペプチドで免疫した場合には、前者の30倍以上に強いキラーT細胞や中和抗体の誘導が可能であった。今後この誘導されたキラーT細胞や中和抗体の性質や、誘導機構を検討したい。
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