研究概要 |
1. gp160によるアポートシスのシグナル伝達 CD4+細胞内でgp160,あるいは、gp120をinducible promoterを用いて発現させたところ、gp160を発現させた場合にのみ細胞内Ca^<2+>の上昇が起こり引き続いてDNA断片化を生じ、細胞はアポートシスにより死滅した。この系にあらかじめカルモジュリン(CaM)阻害剤であるW-7を加えておくと、細胞内Ca^<2+>上昇およびDNA断片化が共に阻止された。最近の報告によればgp160のC端領域にはCaM結合ドメイン様のアミノ酸配列があることがわかっている。実際我々が用いたgp160発現細胞でも、細胞内でgp160とCaMが複合体を作っていることが、抗Env抗体と抗CaM抗体を用いた免疫沈降法+イムノブロット法で証明された。さらにCaM結合ドメイン部を欠失させた変異gp160を細胞内で発現させたところアポートシスは生じなかった。以上の結果よりgp160によるアポートシスは、gp160がCaMに直接結合することによりCaMを活性化し細胞内Ca^<2+>を上昇させる機序が予想され、今後さらに検討を加える予定である。 2. gp120のTリンパ球アポートシスに及ぼす効果 recombinant gp120を分泌するUE120細胞を大量培養し、培養上清よりHPLCと抗Env抗体を用いたイムノアフィニティーカラムによりrgp120を分離・精製した。このようにして得られたrgp120は銀染色上ほぼ単一バンドを呈していた。健常人末梢血リンパ球にPHAを加えて2日間培養して活性化させた後、IL-2欠乏培養液に移しrgp120を10μg/mlを加えたところ、CD4およびCD8両Tリンパ球集団の著明なアポートシスが生じた。この現象は実際のHIV感染者の末梢血リンパ球でも観察されるものであり、このモデルを用いて現在さらにgp120によるTリンパ球アポートシスの機序の解明を行っている。
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