末梢血由来の単球をIL-4とGM-CSFの存在下に分化誘導すれば樹状細胞(DC)が維持され、M-CSFで培養すればマクロファージに分化・増殖する。これらの抗原提示細胞特に樹状細胞(DC)はT細胞指向性のHIV-1に潜伏感染し、抗原特異的にT細胞を活性化すると同時にウイルスを伝播し、T細胞による大量のウイルス産生を誘導する。この時のDCとT細胞の相互作用には細胞同士の接着が不可欠であり、特にLFA-1/ICAM-1やLFA-3/CD2を介する細胞接着が初期のウイルス伝播に重要であることが明らかとなった。この2種類の細胞接着を抗体で同時に阻害すると、T細胞の活性化によるIL-2産生の抑制とウイルス増殖の強い抑制がおこる。一方抗CD2抗体でCD2を介する刺激を加えるとIL-2の産生は変わらないにも関わらずウイルス産生は2倍になった。従ってウイルスを産生するT細胞の維持にはIL-2が必要であるが、ウイルス増殖の刺激は接着分子を介して直接T細胞内に伝わっていることが示唆された。このようなDCとT細胞の抗原を介する相互の活性化がHIVの増殖促進に作用しており、生体内における免疫反応によるウイルス感染拡大のモデルとして有用な系であると考えられた。一方マクロファージ指向性HIVはDCに感染しにくいこと、純化した活性化T細胞でもほとんど増殖しないことから、マクロファージ指向性ウイルスの感染伝播には関与しないと思われた。しかしながら同じ単球由来マクロファージには効率よく感染する。これには二つの細胞でのウイルスの細胞内侵入から逆転写までの過程の違いも大きいが、一旦侵入したウイルスの増殖を促進する何らかの細胞内因子の関与も示唆された。
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