研究概要 |
神経活動依存性に発現して発達可逆性に関わる遺伝子を探索し、その機能を解明する事を目的として、分子生物学的および電気生理学実験を行った。すでにラットの下肢に末梢痛み刺激を与えることにより、数時間後に当該腰髄髄節において低分子量GTP結合蛋白(smg)であるKrev-1とrasの発現が増加することを見い出している。この結果に基づき、中枢において発達可塑性研究が最も進んでいる視覚野でも同様の神経活動依存性変化が起こるかどうかを調べた。生後7〜10日齢で一側の眼球を摘出し、その後通常の明暗サイクルの環境下に置いて育てた。3週齢、または6週齢の時点で炭酸ガスを用いて安楽死させ、アトラスに従って一次視覚野、外側膝状体、上丘浅層を摘出した。AGPC法によって各部位ごとにmRNAを抽出しRT-PCR法にて種々のsmg(Krev-1=rap1A,ras,rab3A)と内部標準としてアクチン、さらに視覚入力に応じて変化することが報告されているfosやzif/268の発現を検索した。現在までのところ、片眼摘出後2〜5週間(3および6週齢)で対側視覚野(摘出眼の支配を受ける)のKrev-1とrasの発現量が同側に比べ減少した。また外側膝状体においても、対側のrab3Aの発現量が同側に比べ減少した。 一方、シナプス機能の面から可塑的変化を解析し、物質的変化との対応を得る試みとして、視覚野のスライス標本を用いて細胞内および細胞外記録を行い、視覚活動によって結合が影響されるといわれる水平方向シナプス結合の機能を調べた。水平方向入力は垂直方向入力を増強する効果があることがわかったが、片眼摘出後の対応皮質においてこの効果が変化するかどうかを現在検索中である。
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