研究課題/領域番号 |
07278224
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
乾 誠 大阪大学, 医学部, 助教授 (70223237)
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研究分担者 |
林 謙一郎 大阪大学, 医学部, 助手 (90238105)
祖父江 憲治 大阪大学, 医学部, 教授 (20112047)
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キーワード | シナプス後肥厚部 / テンシン / リン酸化チロシン |
研究概要 |
シナプス後部にはシナプス後肥厚部(PSD)と呼ばれる特殊な構造が存在し、化学伝達物質物質受容体の集合、神経細胞間の接合、受容体感受性の制御などの機能に密接に関与していると考えられている。しかしながら、PSDの分子レベルでの構造、機能に関する解析は未だほとんど成されていない。本研究は、PSDの分子構築を明らかにし、機能蛋白質の同定及びPSD蛋白質間の相互作用の解析からシナプス機能を解明し、神経回路網形成における役割を明らかにすることを目的とする。 ラット脳より調製したPSD分画には、約180kDaと110kDaの2つの主要なチロシンリン酸化蛋白質が存在する。これらのリン酸化を中心にいわゆる細胞接着部の細胞骨格系蛋白質がPSDの形成及び機能に重要な役割を果たしているのではないかという仮説のもとに、SH2ドメインを含む蛋白質、チロシンリン酸化蛋白質、アクチン関連細胞骨格蛋白質の検察を特異抗体を用いて行った。この際、PSD精製中に得られる各細胞下分画とPSD分画との比較からPSDへの局在を検討した。PSD分画には、カルスペクチンとCaMキナーゼIIの集積がみられ、、抗チロシンリン酸化抗体で染まる180kDaの蛋白質(NMDAレセプター2)も濃縮されている。このようなPSD分画を含めた各分画を用いてイムノブロットを行った結果、テンシン、α-アクチニンが著明にPSD分画に集積されていた。これに対し、src、パキシリン、ビンキュリン、FAKなどは、PSD分画に集積されていなかった。テンシンは、PSD分画を用いた金コロイド法による免疫電顕によってPSD構成員であることが示された。また、脳の発達に伴うテンシン発現量の変化を抗テンシン抗体を用いて調べた結果、ラット前脳の湿重量あたりのテンシン含量は、生後1週から2週にかけて著明に増加し、3週以降はほぼ一定であることが示された。すなわち、テンシンの発現は、シナプス形成時期に一致して著明に増加していた。 以上の結果は、アクチン結合蛋白質であるテンシンが神経シナプスのPSDの構成蛋白質であることを示している。また、テンシンはアクチンフィラメントを同部位に固定する役割を担うと考えられる。しかしながら、パキシリン、ビンキュリン、FAKなどと局在を異にすることから、PSDにおけるテンシンは他の細胞接着部位でのテンシンの存在様式とは全く異なった形で存在すると考えられる。現在、PSDにおけるテンシンの結合蛋白質、存在様式の解析を精力的に進めている。
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