PSDはシナプス伝達の中心になる部位であり、伝達物質受容体刺激以降の細胞内の情報伝達に関与する多くの分子が存在しており、シナプスの物質的基盤を解析するために格好の実験材料であるにもかかわらず、不溶性のため、生化学的な成果はほとんど挙げられていない。本研究ではシナプス後肥厚の主要構成タンパク質であるCa^<2+>/カルモデュリン依存性プロテインキナーゼII(キナーゼII)の活性調節とキナーゼIIによってリン酸化され機能調節されるタンパク質を中心とし解析し、以下の結果を得た。 1。PSDキナーゼIIの活性化:SDキナーゼIIが、自己リン酸化された場合にのみ、Ca^<2+>プロテアーゼであるカルパインによって5-10倍活性化されることを見い出し、不活性型のPSDキナーゼIIは活性化され得る性質であることが明かにした。 2。活性型のPSDキナーゼIIの精製:活性型のPSDキナーゼIIを均一に精製し、酵素学的性質を明らかにした。この活性化はタンパク質の分解がともなう不可逆的変化であるので、可逆的に働く内在性の活性化因子を探索し、PSDキナーゼIIの活性化を明かにする。 3。PSDキナーゼIIの特異的な基質の同定:PSDにはCキナーゼ、チロシンキナーゼなど、キナーゼII以外のプロテインキナーゼが共存しているが、PSDキナーゼIIの特異的な基質が存在することが明らかになったので、現在その同定を進めている。 今後は、シナプス形成とPSDの形成との関係、および、長期増強に関与するタンパク質を明かにすることにより、受容体刺激以降の細胞内情報伝達の仕組と調節の分子メカニズムを解明することを目的とする。
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