野生型tax-4遺伝子のゲノムDNA及びcDNAの構造と、3つのtax-4変異の突然変異部位を決定した。野生型tax-4遺伝子は、10個のエクソンより成り、733個のアミノ酸より成るタンパクをコードしていた。p678変異体は、82番目のアミノ酸が終始コドンに置換しており、おそらくNull変異体であることがわかった。ks11変異体は、チャンネルの穴(Pore)を構成していると思われる領域に、また、ks28変異体は、2番目の膜貫通領域と思われる領域に、それぞれミスセンス変異株を持つことがわかった。これらのミスセンス変異の部位は、現在までにクローニングされているすべてのcAMP依存性チャンネルとcGMP依存性チャンネルにおいて保存されている。従って、これらの部位のアミノ酸がチャンネルの構造や機能に必須であることが示唆された。3つのtax-4変異体について、揮発性物質に対する化学走性を詳細に調べたところ、すべての変異体が、嗅覚ニューロンAWAで受容される揮発性誘因物質に対しては、正常に近い応答を示すが、嗅覚ニューロンAWCで受容される揮発性誘因物質に対しては、全く応答しなかった。従って、AWCが関与する嗅覚機構に関して、Tax-4チャンネルが必須であることもわかった。また、tax-4/GFP fusion遺伝子を導入した株を作成してGFPの発現細胞を同定したところ、AFD温度受容ニューロン、ASE味覚ニューロン、AWC嗅覚ニューロンなど、tax-4変異体で見られる感覚行動異常に関するすべての感覚ニューロンで、Tax-4チャンネルが発現していることを示唆する結果を得た。従って、環状ヌクレオチド依存性チャンネルが、哺乳類で知られている視覚や嗅覚のシグナル伝達系のみならず、温度受容や味覚のシグナル伝達系にも重要な役割を担っていることが全生物を通じて初めて示唆された。
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