研究概要 |
「ニューロン・ニューロン間のシグナル伝達を支えるのはグリアである」といっても過言ではない。有髄神経のミエリン鞘(オリゴデンドロサイト、シュワン細胞)やアストロサイト上のニューロトランスミッター受容体刺激に伴う、アストロサイト間のギャップジャンクションを介したCa^<2+>の伝播など、アストロサイトの役割を無視してシグナル伝達の研究は成立しない。われわれは、これまでニューロン性細胞の増殖・分化機構を追求するなかで、ニューロンとアストロサイトの共存培養系でニューロンは著明な分化(神経突起伸長とシナプス形成)をとげることを見いだし、これらの作用はアストロサイトが産生するタンパク質性因子であることを確認した[Brain Res.622(1933)299-302,659(1994)169-178]。 昨年度の本重点研究の成果として、(1)細胞内カルシウムシグナリング法を用いたシナプス形成モデル系において、大脳皮質、海馬、中隔野、線条体より調製したニューロンとアストロサイトを同系、異系の組み合わせで共培養しそれぞれのシナプス形成能を測定したところ、脳の同じ部位から調製したアストロサイトとニューロンの共培養系でのシナプス形成が一番良くシナプス形成することを見いだした。さらに(2)アストロサイト細胞内のCa^<2+>の動きを修飾する薬剤(IP_3レセプター拮抗薬やアストロサイトのギャップジャンクションの阻止薬)を用いて、短期と長期薬剤刺激によるシナプス形成の変化を検討した結果、シナプス形成にあずかるニューロンの細胞内Ca^<2+>の同期にはIP_3レセプターを介した細胞内Ca^<2+>の変動と、フィーダーアストロサイト間のギャップジャンクションを介したCa^<2+>の伝播が重要であることを確認した。またこの薬剤の長期投与によりシナプス形成能も阻害されることがわかった。
|